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2013年度11月号
 
「乳児期は、あるがまま受け入れて育つ。人間の中で一番感覚が優れている存在」
< 乳児がもつ能力の驚異・生活環境が気質を形成・体験的考察 >
園長 木村 仁
 
  私が、生まれる前から、父親の右手の義手が壁にかかっていた。 
  私は、生まれてから何気なく毎日父親の義手を見て大きくなった。
 乳児期に見ていたものが、後の自分の人生に影響を与えていることを知ることになる。
 父親の義手を見て育った私は、50歳頃から父親の義手をどう感じていたのか、意識が強くなり75歳になっても思い出し続けている。
 
 現在、生後間もない乳児と毎日係って生活している。乳児の目が大人には想像できないほど物事を感じる能力を持っていることを、日々新たに発見をしている。その発見から、自分が乳児期に幼い目で見たことが、何を意味しているのかを考察するようになっている。
 
 「乳児の目で見ると、どのように感じるのだろうか。自分を観察しながら、思考している、私がいる」
 
 46歳でトモエを創設した時には、「健常児・障害児」と言う呼び方を自分の人生から消滅させた。障害児教育の補助金が1千万円ほどあったものが無くなる事を承知の上で。
 人間は、みんな何らかのハンディを持って生きている。『人間は、みんな同じ人間』。必要に応じて寄り添うことが、とても大切なこと。家族は、互いに寄り添い補い合って生きている。
 
 「父親の義手」を、乳児期から成長する段階で、あるがまま受け入れていたから、障害児・健常児という表現を無くしてしまったのかも知れないと私は思っている。父親の義手は、私の人生に大きな影響を与え続けていることを、現在も感じさせてくれている。
 
 父は、私が生まれる前に右手の肘と肩の中間部分まで切断する事故にあった。私は、生まれてからその義手が壁にかかっているのを見て育っていた。その義手が、私の人生の差別と言う概念に大きく影響を与えていたことを、50歳になる頃から気づくことになるとは、思ってもいなかった。私は、10代20代、父と一緒に歩いても、右手がないことで恥ずかしいという思いがなかったことに50歳頃に気づいた。
 
 30歳で牧師と園長になり子育て中、町営住宅の家の前の子どもが、いつも泥だらけの服装で家に入ってきても平気だったこと。その子どもは、母親に放棄されて育っていたようでした。我が子とは、楽しく遊んでいたので見守っていた。そのためか、5人の子ども達は、差別することを嫌がる大人になっているようだ。孫たちにも、差別することが少ない生活が受け継がれているように思える。
 
 『義理の孫や娘たち?』も、やさしさや配慮ができる人に成長してくれているので、トモエを創造してよかったと思っている。
 
 『人を、差別や無視する人は、自分自身を無視する可能性が大きい。自分の人生を軽視することにもなりかねない』と私は、感じている。人を無視してはならない。何らかの理由でも、人を軽視してはならない。自分も軽視する人生を過ごすことになるのだから・・・。
 
 我が子と、『軽視する人生』について話し合うことが大切な時代になってきたと思う。
 
 私は、15歳頃から少しでも心が通い合う心の交流を求めて生きていた。『幸せの原点は、心が温かく通じ合うことである』と、60歳を過ぎた頃より確信するようになった。
 
 少しでも本音で話せるように意識して自分を創っている。ですから、私に話しやすいのか本音で話してくれる人が多かったように思う。自分の意図していないことを「そういっていたでしょう」と押し付けられ悲しい体験をたくさんしてきた。
 
 しかし、現在、その人のあるがまま受け入れることが、人との心の交流で最も大切なことであることを、自分に言い聞かせながら日々生きている自分がいる。
 
 人の人生、個性・気質は、乳児期に、目や肌から何を感じてきたかで、基礎が創られるようですね。乳幼児の目を、数十年間も観察させてもらい75歳の現在も新しい発見をさせていただいている。
 
 人間って素晴らしいですね。不思議と神秘に満ちていますよね。
 
 大人は、自分自身が、どんな人間であるのか身体や心を見つめ直すことを、胎児や乳児から学べるのです。
 
 『意識して感じよう』としなければ、人間の神秘や不思議を乳幼児から学べないでしょう。乳幼児は、人間探求の基盤なのです。ですから、乳幼児を侮ってはいけない。
 
 『命が、どのように生まれてきたのか。胎児・乳児から学べるのです』
 
 『なぜ、人は、人を愛さなければ、生きられないのか』
 
 『胎児・乳児を知ることで、自分を知るための基礎となるのです』
 
 私は、人間の神秘と不思議を知るために「人体」の本をいつも見ています。自分を知るための基礎ですから・・・。毎日の生活で、忘れがちになるので、時々自己認識の基礎として本は手放せません。学問として覚えるより、自分や人がどんなに素晴らしい人体を持っているのか、生涯心に刻むことを心がけています。
 
 面白くて分かりやすい本がでました。
 「講談社の動く図鑑・人体のふしぎ。親子で楽しめる50分DVDつき」1900円。道徳教育や性教育人権教育の基礎となると、私は思います。
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