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月に一回発行される園内便り「創造の森」に掲載されている園長 木村 仁の父母に向けてのメッセージです
2012年度7・8月号
『幸せになろうよ』
自由は、幸せを呼ぶ。自由は、自分の人生を歩める。
園長 木村 仁
先日、突然卒園家族のおかあさんがトモエを訪問してくださった。両手には、分厚い書籍を手にしていました。
「私の娘が出版社に勤めていて、娘が企画した本です」と園長に手渡してくださった。
「娘は、私立中学を途中でやめたいと悩んでいるときに、札幌駅前で園長に会ったこと覚えていますか」
“覚えていますよ。ほんとうに。その時は、慶応義塾渡辺久子さんの講演会があった時ですよ。”
「私たちのほうに手を振っているので誰かと思っていました。タクシーに手を上げているアラブ人かと思っていましたら、園長が近づいてきたのです。ビックリしました」
“30代で、スパニッシュに間違えられてことがありましたが、50代では、アラブ人か・・・”
「ひげが真っ黒で髪は長髪でどう見てもね・・・」
“・・・・”
「園長と会ったときは、娘と私立中学校を辞めるかどうか悩んでいたときでした。夫は、学校になじめないのは、トモエ幼稚園に行かせたせいだ。と言っていました」
“お母さんは、どう思っていたの”
「う・・・ちょっと迷っていたかな。でも、園長!娘は、はっきりと私たち夫婦に宣言していましたよ。
《今このように自分の人生を自分らしく自由に表現して歩めるのは、トモエのおかげです。トモエと出会っていなければ、今の自分は無かったと思う》とキッパリ言っていましたので、私もとても嬉しいです。
“発想が面白く。様々な構想が次から次へと出てくるのでしょうね。”
「何で、園長分かるの。卒園して20数年も会っていない娘なのに・・・」
“分かるの!この本を見ていると・・・。会いたいな・・・素敵に成長した卒園生と出会えるのは、生きるエネルギーになるんだ”
「今度帰ってきたときに、トモエにつれてくるね」
“おねがい~”
私は、この会話でポール・トゥルニエ博士の言葉を思い出す。
「子どもは、大人から敬意をはらわれる度合いに応じて自分の人格を意識し、自分の人間としての尊厳を自覚して自分自身を尊重するようになります。のちに、大人になってからの道徳的態度全体に影響を与えることになります」。
「子どもの頃に遊ぶすべを心得ていた人は、大人になって働くすべをわきまえた人間になります。こういう人は、ものごとに集中する能力とか共同作業のコツ、アイディアを生み出す力など、子どもの頃遊びのために磨いた才能を、大人になった現在、仕事に生かすことができるでしょう」。
乳幼児期に本音を出して自己表現したことが、卒園後20数年たって大人になり、自分の人生を歩める喜びを発見しているのですね。
乳幼児期に自由に自己表現することで、自分が表現したことを、その人に良かったのか悪かったのか、人を鏡にして自分の心を見つめるのです。自由に表現することは、自分を見つめ、人間理解の重要なことなのです。乳幼児期こそなくてはならない要素なのです。自由は、自分と人を幸せにする要因なのです。6歳以降に自由な表現ができる環境を与えても、人間理解が身につきにくいようですね。個性や気質は、乳児期に基礎が創られるのですから・・・。
6歳から自由を与えている小学校や中学校など、自由を与えている教育機関を観察研究してきましたが、自由を手にしても使い方を知らないので、とても時間がかかり苦悩しています。人間関係においても相手の空気を読めるのに時間がかかっています。中学校では、自分勝手な行動をしてしまう生徒が多いようです。
0歳から新しいものの発見の喜びの探索行動が、成長段階で日々激しくなっていきます。 大人の都合ばかりを考えて、規制してしまうと刺激が少なく育ってしまうのです。大人の強制が多いと「指示待ち症候群」となり、放任や子どもの言いなりになってしまうと「自分勝手な言動をし、相手の心の空気が読めない人」になってしまうのです。
乳幼児の個々の発達に応じて寄り添いつつ、大人自身の自分の心も素直に表現しながら自分と乳幼児の心地よい関係を日々創造しようとすることで、幸せになれるのではないでしょうか。
人間の命は、胎児期から乳幼児へと成長するもので、人間にとっては最も重要な尊い時間がここにあるのです。自分と心地よく関わるためには、自由に表現して自分を知ることで、自分らしい人生を歩めるのです。自分に少しでも素直に関わりながら人生を歩むことが、幸せと言えるのではないでしょうか。
自分の心や人の個々の心も感じられなくなっている時代が来ています。園長は、40数年前から人間の感性が鈍化していくことを感じて、人や自然に親しく関わり人間の感性が素敵に育つ環境の創造に努力してきました。多くの方の協力で現在まで共に歩んできました。感謝の人生です。幸せの人生です。
多くの人が、心から喜べる幸せを感じて、人生を歩んでほしいと願いこれからも努力し続けます。一緒に歩きませんか。
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